絵を描く

「デッサン」について、ギタリスト兼高校美術教師の中村シキカツさんのブログに面白い記事が載っていました。

動くもの、変化するものを描くことは測量的なデッサンでは難しい。
捉えることが難しい場合はイデア(自分が感じた理想的なかたち)を描けばいい。

この考え方は私を刺激しました。
「絵を描くこと」には様々な段階があることを中村さんの考え方によって意識するようになりました。

「デッサン」、「クロッキー」、「スケッチ」、「ドローイング」、「ペインティング」。
「絵を描くこと」はいろいろな言葉で呼ばれています。呼び方を変えることで便利な場合もありますが、今回はややこしくなりそうなので「絵を描くこと」に統一します。

どんな人も最初は「なぐり描き」からスタートします。
自分の手の動きが点や線となってのこり、とっても愉快な気分です。
ぐるぐる手を動かしていると、なんだか顔のように見えてきます。
もう一度ぐるぐる動かして描いた形は目のように見えます。

もっと、ぐるぐる描いていると手や足、体のように見えてきます。
そこで、このぐるぐるたちを人だということに決めました。

何度も描いているうちに、もっとうまいやり方を発見しました。
ぐるっと一度描けば、ぐるぐると同じ形が描けて便利です。
そこで、いろいろ試してみることにしました。
ぐる~と、ぐるーと、グルット、グルルット。あっ!ギザギザも素敵です。うねうねも気持ちいい、

男の人も、女の人も、太陽も、雲も、花も、家も描けるようになりました。
何度も、何度も、お気に入りの絵を描きます。
もう、描き方はおぼえました。何度も、何度も描きます。

学校に入りました。文字や数を使うようになりました。
いろいろなことをおぼえました。
最初は何となくでしたが、そのうち自分が描いた人や花や家が本物と違うことに気がつきました。

本物と同じになるように一生懸命観察しました。
髪の毛は一本一本描きます。瞳の真ん中には黒い点、そのまわりにはこげ茶色です。白目には血管が見えます。見えたとおりに一生懸命描きました。

それでも何か変です。見えたとおりには描けません。
大きさが変です。形が歪んでいます。

そこで測ってみることにしました。棒を使えば大きさも角度も測ることができます。頭を動かさないようにして、棒を持った手をいっぱいに伸ばして描いてみました。
今度は大丈夫、見えたとおりに描けます。何枚も描いて、測り方も上手になりました。
棒もたまに使うだけで大丈夫です。

ある時、動物を描こうと思いました。
けれど動物はいつも動き回っています。これでは棒を使って測ることはできません。
動物ばかりではなく、花を描こうと思ってもどんどん形が変わるので描くことができません。

そこで考えました。頭のなかに空間を想像し、そこに運動する動物の一瞬の形を配置する。それを思い出して描いてみよう。
それから動物を観察し、何枚も何枚も絵を描いて形を記憶しようとがんばりました。
動物の模型を作って、いろいろな角度から眺めました。
写真やビデオにとって研究しました。
一生懸命努力したので、頭のなかに動物の形を想像できるようになってきました。

空間を描くために透視図法の勉強もしました。線遠近法の限界にも気がつきました。
曲線遠近法も試してみましたが、この方法は正しい一点からでないと歪んで見えます。
そこで、「絵を描くこと」についてさらに考えました。

測量的な方法で描いていた時は、見えるもののすべては描けず、大切だと思ったところだけを無意識に取り出して描いていたこと。写真だって対象の全てを記録出来ないこと。
全てを描かなくても、絵を見た人が描かれていない部分を想像で補ってくれること。
たくさんのことに気づきました。

そう考えると、正確さにそれほどこだわらなくてもいいのかな?
正確さより、絵を見た人が納得する形を描けばいいのかな?

正確さよりもそのものらしく描く。
そのことに気がつくと、だいぶ気持ちが楽になりました。

「絵を描くこと」を続けていると、どんどん視覚情報がたまります。
何をどんな風に描けばそれらしく見えるのか、だんだんのみ込めてきました。
必要な時、必要な情報を引き出して、絵を構成するやり方わかりました。

ダヴィンチが人体解剖をおこなった理由がわかりました。
一枚の絵を描くために、何枚も下絵を準備する理由がわかりました。

ひとつの技能を習得すると次の段階にすすみ、そこでまた新たな技能を獲得して別の段階にすすむ。「絵を描くこと」は習得した技能によって階層化されていることに気づきました。





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