ラブサイケデリコを透して教育の未来を覗く (1)

日本のロックグループ、ラブサイケデリコがおもしろい。

70年代生まれの彼らの曲は、60年代ロックのおいしいところがセンスよくちりばめられている。
日本語と英語が融け合った歌詞は、一聴しただけでは判別困難。(しばらくの間、日本語であることに気づかず、洋楽だと思い込んでいたのは私だけではあるまい。)
耳が慣れてくると、日本語と英語が交互に喚起するイメージや言葉の不思議な響きに魅力を感じるようになった。

ラブサイケデリコは未来的だ。
彼らの存在は私に、教育関係者の描く未来が幻であることを気づかせてくれた。

"oh,you ate one,too 胸の中 限界の groove slipping so smoothly 業を喰らうも through"
LOVE PSYCHEDELICO 「You ate it」より

ボーカルのKUMIはカルフォルニアで育ち、地元の聖歌隊でネイティブの発音と歌を身につけたそうだ。日本語と英語、おそらく二つの言語系統が頭の中にあるのだろう。日本語で表現しやすい感情は日本語、英語で表現しやすい感情は英語とスウィッチしながら作詞しているようだ。「しっくりくる」か「否」か、あるいは「ビートにのる」か「否」かが判断基準だと推測される。

英語教育に対する関心は依然として高い。古くは「100万人の英語」から、否、夏目漱石の時代から今日のTOEICブームや英会話スクールの隆盛まで続いている。複数の言語を操る能力を身につけることが、国際化する社会のなかで生き残る必須の力だと信じられている。
すべての授業を英語で行う小学校、「ゆとりの教育」で削減された内容や授業時間数に不安を感じる英語教師。これらは英語教育が重要だと思えばこその現象であろう。

KUMIは英語教育に関心がある人たちが思い描く理想の人物像である。心理的な障壁を感じず、二つの言語圏を行き来できる人物。彼女の歌が日本語と英語のチャンポンであっても何も問題は無い。ビートに支配されるロックというフォーマットでの日本語の表現方法を彼女は提案したに過ぎない。「愛されている いつも Satisfied」と歌った矢沢永吉や、「路上往来 僕を愚弄した Lady」と英語の響きに酷似した日本語を寄せ集めイメージを喚起させる桑田佳祐と同一線上にいるだけである。ただ、彼女の場合は日本語が英語に聞こえる割合が圧倒的に高い。

今後、英語教育が成果を上げるにつれて、彼女のように二つの言語系統で考えることができる人が増えるだろう。その時、彼女の歌に対して私のように不思議を感じる人はごく少数になり、多くの人が自然な表現として受け取るのだろう。

「美しい日本語」「正しい言葉の使い方」などを素直に信じている人たちの耳にラブサイケデリコの歌はどのように聞こえる?

学校で私たちが学んでいる日本語はいつ成立したのだろう?
階級や地方によって話し言葉は様々だったはずだ。
書き言葉は?
寺子屋制度のおかげで識字率が当時としては異様に高かったとしても、漢文、文語体、口語体が混在してたはずだ。
誰がどのようにして統合したのだろうか?

明治期に私たちが現在日本語として認識している言語の原型が形作られた。明治期は大量の欧米文化が流入した時代である。文明の利器と呼ばれた物質的なものばかりではなく、思想や概念なども一度に流れ込んできた。江戸時代の言葉ではそれらを言い表すことができなかった。明治人は新国家建設の必要に迫られ日本語を作りかえた。新しい語が作られ、文構造も変化した。現在の日本語は欧米言語の影響によって成立したのだ。

その後も日本語は変化し続けている。「美しい日本語」「正しい言葉の使い方」って何なんだろう?誰が決めた規範なんだろうか?一部の文化人の憧憬によるものなのか?
文法は法でなく傾向や使用例の集積に過ぎないのではないか?

英語も変化し続けている。他民族文化の流入、地方化、階層化によって分化しつづけている。日本から近年流入し続けているオタク文化も若年層に与える影響はジャポニズム以上のものだろう。

高度に情報化が進んだ現代、この文化の交雑を制御することは誰にもできない。
日本語も英語も過去の規範は言語のコミュニケーション機能を抑圧するようになるだろう。

 言語上の規範は犬の血統を維持するための基準(スタンダード)に酷似している。スタンダードを維持するために極端な近親交配がなされ遺伝的な欠陥を持ってしまった犬種は少なくない。スタンダードからはずれるという理由だけで処分される生命も多い。そんなイメージを持ってしまう。

教育は規範ではなく、機能が大切である。
時代によって変化する美意識ではなく、伝える意欲と技術を大切にしたい。

ロック・フォーマット上で、感情を伝える機能を果たしているラブサイケデリコの歌は未来の言語を予感させる。

つづく





ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • Hybrid Art Session in My Head.

    Excerpt: 注意:脳みそに詰まったカスをはき出す作業もたまには必要って事で、能書きです。スル... Weblog: R749.com[いっきにっき] racked: 2007-08-24 12:08