学校で美術を学ぶのは何故?

「学校で美術を学ぶのは何故?」
美術の教師はこの疑問に対する答をいつも考えている。

私は「イメージを操作する力」こそが「考える力」そのものだと信じている。美術教育はその教育活動を通して「視覚リテラシー」を向上させ「イメージを操作する力=考える力」を伸ばす教科だと考えている。

絵を描いているとたくさんの疑問がわいてくる。
キラキラ輝く水面や金属はどう描くのか?
透明なガラスは?

その度に考える。絵具には白より明るい色や黒より暗い色は存在しない。
それではどうする?
何故キラキラ光って見えるのか考える。
光っている部分は周囲と比べると著しく明るいことに気づく。
絵具で試してみる。本物と違ってまぶしくはないけど光って見える。
光の量が少なくても周囲と著しく明度差がある色を人間(脳)は光っていると感じることを理解する。

絵を描いているとそんな風にわいてくる疑問に対する答を考える。
実験をしながら考える。

そんな風に考えていると時々衝撃的な事実にぶち当たる。
どんな事実に気がついたのかというと、脳科学者の茂木健一郎が「クオリア入門」のプロローグで、私よりもずっと分かり易く述べているので、以下そのまま引用します。

<季節は、十一月も終わりの頃だった。風もなく、陽光も穏やかで、私は草地に座って、ゆったりとしていた。ケム川の流れの中をとてもゆっくりと進んでいく、「パント」と呼ばれるボートの姿も見えた。その時、突然、私は次のような思いに襲われたのだ。

今、私の目の前に広がっている牧場の景色は、私の外にあると思っているけど、本当は私のこの小さな頭蓋骨の中にしか存在しない。私の頬をなでているこの風も、実は私の小さな頭蓋骨の中にある表象に過ぎない。私に見えていることの全ては、本当は私の外にあるのではなくて、私の頭蓋骨の中にあるニューロンの発火の結果生ずる現象に過ぎないのだ。
私は、私の心は、どうあがいても、この頭蓋骨の中の狭い空間から逃れることができない。
どんなに雄大な景色の前に立っても、たとえ、グランド・キャニオンや、木星の巨大赤斑を目の前にしても、それを見て、感じる私の心は、この頭蓋骨に閉じ込められている。
私の心は、あくまでも、この一リットル足らずの頭蓋骨の中にある・・・・・
 この結論は、とても驚くべきもののように思われた。その考えの衝撃が、広く深く、私の心の中に広がっていった。私は、生まれてはじめて、私という存在が、そして、私にとっての世界の存在が脳内現象に過ぎないことを実感したのだった。
 それから、私は牧場の中を散歩し続けたが、周りの景色が、今までとはまるで違ったもののように感じられた。
 心が頭蓋骨の中の脳味噌に宿っているなんて、そんなこと当たり前じゃないか。そんなことを三十過ぎになるまで知らなかったのか?そのように言う人もいるかもしれない。
 だが「知る」ことと[感じる」ことは違うのだ。
 現在知られている大脳生理学の実験的データに基づいて論理的に考えれば、

 (1) 外界にどのような事物があっても、私の脳の中のニューロンがそれに対して発火しなければ、私の心にはその事物の認識は生じない。

 (2) たとえ外界に事物が存在しなかったとしても、私の脳の中のニューロンがあるパターンで発火すれば、そのような事物が見えてしまう。

 という二つの命題は、否定することはできないように思われる。特にに番目の命題は、ヴァーチャル・リアリティとして、技術的に実現されつつある。
 どんなに雄大な景色が目の前に広がっていても、それを見て、感じている私の心は、脳の中のニューロンの活動に支えられている現象なのだ。ここまでは、知識としては、多くの人が知っていると思う。しかし、このような私たちの心と脳の中のニューロンの活動の関係を知識として持つことと、自分が現に見ている、聞いている、感じている外界の様々な事物が、自分の頭蓋骨の中の脳の中のニューロンの活動に過ぎないということを、リアル・タイムで「感じる」ことは、別の問題なのだ。自分の心が、自分が認識し、感じ、考えることの全てが、狭い頭蓋骨の中に閉じ込められている現象に過ぎないこと、そして、生きている限り、私がある限り、私の心はこの狭い空間の領域に閉じ込められたままだろうということを感じることは、人生観、世界観を変えるほどの衝撃を私たちに与える。>

私はこの事実がとても重要なことに思える。
この事実を前提にしない教育では世界のありようを伝えることは出来ない。

私は絵を描きながら可視光線、可聴域について考えているときこの事実に行き当たった。
絵を描けば必ずこの考えを悟ることではない。それは十分わかっている。しかし、出会いの確率は高まるように思えてならない。

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